情炎の焔~危険な戦国軍師~
第12戦 左近の奇襲
それから再び忙しくなった。


西軍に加担してくれる毛利輝元様や長曽我部盛親様のところに、三成様自ら木津川まで行って挨拶へ行くこともあった。


そんな折、秀吉様が可愛がっていたという人が三成様と会うことになった。


三成様が挨拶すると、その人は機嫌が良くないようで、ふてぶてしい顔をしている。


「石田三成です」


「小早川秀秋だ」


その名前を聞いて私は思わず立ち上がった。


小早川秀秋といえば、秀吉様の正妻、ねね様の親戚だったと記憶している。


それはともかくとして、確か彼は関ヶ原で西軍を裏切ったことで有名ではなかったか。


「裏…っ」


彼が裏切るであろうことをここで大声で糾弾したかった。


しかし、声は出なかった。


「どうして…」


悔しい。


知っているのに。


それに三成様もどうして?


もしかしてあの歴史小説、読んでくれていないのかな。


佐和山城に帰ったら聞いてみよう。


そんなことを考えながら秀秋殿の顔をじっと見ていた。
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