情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド友衣-


左近様が帰ってきたと知り、私は走って部屋にお邪魔した。


「どうしたんです?」


その言葉にも答えず、私は半分泣きながら彼に抱きついた。


「よくぞご無事で」


「ははは、大げさですね。それくらいで泣かないで下さいよ」


「それくらいとはなんです。奇襲っていうからそうかと思ってましたが、三成様に聞いたら一歩間違えれば左近様まで死にかねない危ない方法だって言うじゃないですか。本当に心配してたんですからね」


体を離した私は左近様の着物の袖にすがりながら、夢中で一気にまくし立てた。


「ありがとうございます。そんなに泣くほど心配してくれたんですね」


「そうですっ」


「言ったでしょう?あんたみたいな泣き虫、心配で目が離せないって。あんたを置いてったら不安で死ぬに死ねませんよ」


いつまでも左近様は笑っている。


「もう、そんなに笑って。私は真剣に」


その時だった。


「!」


肩を抱かれ、急に左近様の顔が近づいてきたと思うと唇が重なった。


柔らかく、温かい。


まるで媚薬でも仕込まれたかのように頭がぼーっとしてしまう。


私のファーストキスの相手がまさか戦国武将だなんて一体誰が想像出来ただろう。


「女を黙らすにはこれが一番ですからね」


顔を離して見た顔はやっぱり微笑している。


「…っ」


やだ、なんか顔を直視出来ない。


思わず背を向けると後ろから抱きしめられた。


耳元で声がする。


「会いたかったんですよ、ずっと」


「え?」


「あっちに行った時さえもあんたの夢を見た。それも、楽しい穏やかな夢を」


「嬉しいです」


そんなに私のことを想ってくれるなんて。


「こうしてる時が、一番幸せだ」


そう呟くように言っている。


彼の額が肩にこつん、と触れた。


私は胸の下辺りにある彼の手に、自分の手を重ねる。


「私も今が一番幸せです」


仕事さえも忘れ、私はそっと目を閉じた。
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