小さなあくび。
「なーんか、不思議でさ。
俺が笹の歳だった時のこと、
鮮明に思い出せんのに
もー7年も経つのかぁ~って。
中学生だったんだもんなぁ。
俺なんかもうオッサンだよな、」
「そんなことないよ。
昴兄はイケてるおっさん。」
まぁな、と笑いながら
言い放つ昴兄は
やっぱりめちゃめちゃ
カッコ良くって。
確かに、不思議。
慶とあたしが昆虫採りに行く時、
スケッチブックを片手に
あたしたちが危険なことをしないように
後をついてきてくれたり。
あたしたちがローラーブレードをするときは
両手を持って練習に付き合ってくれたり
あたしたちが夏休みの宿題で
困っているとき、
さりげなく答えを教えてくれたり、
あたしが中学生になってからは、
絵のモデルをさせてもらったり。
いつもいつも、
優しく見守ってくれて
どこか、少し遠くにいた昴兄、
今は、すぐ目の前にあって
でも、決して届かない。