小さなあくび。




美味しくて可愛い

このお店を後にするのは
もったいなかったけど、

あっという間に
車は進んで行く。







「どこ、行きたい?」


「えー!決めてないの?!」



「三十手前のおっさんが
プロデュースするデートなんか

学生にはつまんないだろーよ。」







でも、芙美子さんはきっと

そのデートを心から楽しんでいるんでしょ?




「いいの。」


「ん?」



「オッサンデートがいい!」

「そ?」



そう言って、前を見ながら

片手であたしの頭をポンポンしてくれる昴兄。






「笹はかわいいなぁ。」




そんなさりげない言葉に

舞い上がってしまいそうになる。



溶けてしまいそうになる。





だから、必死に
気にしない気にしない、と念じる。








「いまのおっさんっぽかった!」



「はー?!ひどいな、」






なにげない、この会話が

この瞬間がすき。












< 16 / 66 >

この作品をシェア

pagetop