小さなあくび。
美味しくて可愛い
このお店を後にするのは
もったいなかったけど、
あっという間に
車は進んで行く。
「どこ、行きたい?」
「えー!決めてないの?!」
「三十手前のおっさんが
プロデュースするデートなんか
学生にはつまんないだろーよ。」
でも、芙美子さんはきっと
そのデートを心から楽しんでいるんでしょ?
「いいの。」
「ん?」
「オッサンデートがいい!」
「そ?」
そう言って、前を見ながら
片手であたしの頭をポンポンしてくれる昴兄。
「笹はかわいいなぁ。」
そんなさりげない言葉に
舞い上がってしまいそうになる。
溶けてしまいそうになる。
だから、必死に
気にしない気にしない、と念じる。
「いまのおっさんっぽかった!」
「はー?!ひどいな、」
なにげない、この会話が
この瞬間がすき。