小さなあくび。
「どーすっかなぁ。
ん~。」
基本的に、あっちが行きたいところ
指定してくるから
自分でデート考えるなんて
ないんだよな。
だからこれが初のおっさんプロデュース、だな。
なんて、ブツブツと呟きながら
着々と道は進んで行く。
「んー、じゃあちょっと飛ばしますか。」
と、いってさりげなく高速に乗る昴兄の車。
車がビュンビュンする音だけが響き渡る。
「昴兄はさぁ、
なんで結婚しようと思ったの?」
こんなこと、聞きたくないのに。
自分と芙美子さんの違いを
まじまじと見せつけられたからって
諦めがつくけでもないのに。
馬鹿だ、あたし。
「包容力、かな。」
「ふ~ん、そっか。」
自分から聞いといて、
素っ気ない返事。
あたしってやな奴。
包容力、か。
「女子大生とデートしてくるっていっても
一切、気にしてないみたいで
ちょっと愛想がかけるんだけどな。」
「あたしだったら、
妬いちゃう。」
なに言ってんだ。あたし。
「ごめん、なんでもないよ」
急いで訂正したところで、
昴兄の顔を
直視できなかった。
こんなガキんちょに好かれても、ねぇ。
「それが、笹のいいところでしょ?」
「え?」
「笹には、ありのままの姿で
好きって言ってくれるやつがいるから、
変に大人になろうとしないで?」
なんにも、
なんにも、知らないくせに。
昴兄の言葉は
なんで、こんなにも、
心に突き刺さってしまうんだろう。