小さなあくび。



俺は、さぁちゃんに少しの意地悪をした。






〈まだ、昴兄のこと好きなの?〉


なんて聞いて、

否定する笹を見たかった。

そんな笹を、傷付けたかった。


思いっきり泣いてないて
泣き崩れてしまえば、


昴兄への気持ちも
ズタボロに崩れてくれるんじゃないかって。








だけど、現実は

笹の昴兄への想いをひしひしと
感じとるだけ。



自分を傷つけるだけだった。



昴兄を好きじゃない、と言い張る笹は

結婚、と言う言葉を聞いて
取り乱す笹は



俺のことも苦しめるだけだった。




だからあの時、抱きしめたのは

俺が泣きそうだったから。









俺が昴兄だったらよかったのに。


そしたら、笹は、傷つかなくて良かったのにな。








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