小さなあくび。





「笹とデートしてくる。」


朝のジョギングを終えて
家に帰るなり玄関で昴兄と鉢合わせ。






「デート?」


これ以上、笹と会うな。





「笹の気持ちに、整理つけてくる。」






よく、言うよ。


自分の気持ちに、だろ?


自分勝手。






「俺なら、


俺が昴兄なら、笹を幸せにできた。」






「…慶、」






もしかしたら、初めてかもしれない。
8歳も離れているせいか

兄弟げんかなんてしたことなくて、






はじめて、
昴兄に噛み付いてしまった。







「~!!


とにかく、俺はマジでずっと笹がすきなんだよ!

中途半端なことしたらいくら兄ちゃんでも許さねーから!」








唖然、という表情。






「慶も大人になんだな。」






そう、一言呟いて
いってくるわ。



と、玄関を後にする昴兄。













急にカッと全身の血がめぐり出したかのように
熱くなり、洗面台へ行き顔を洗う。








しばらくすると、車のエンジン音が聞こえてきて

どうしようもなく泣きたくなった。








こんなんだから、
ダメなんだよ、俺。










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