小さなあくび。
一定の距離を置き、
一定の時間を置き、
少しずつ、少しずつ、
日々の生活に身をうずめながら
久しぶりに一緒にいて安心する女に出会った。それが芙美子だった。
俺より一つ年上の彼女は、
俺をたくさん安心させてくれた。
いつも、格好ばっかりつけてた俺には新鮮であり、必要な存在となった。
それが二年前のこと。
笹のことに踏ん切りをつけるため、帰省した年。
笹は20歳を迎えた冬で、
笹と慶太とはじめて
俺の部屋でお酒を飲み明かした。
ガキンチョだった 2人と
いつでも兄貴ぶってた俺と、
こうやって少しずつズレながら歳を重ねて行くことをしみじみと感じながら、ただ、ゆっくりと時間が過ぎた。
「さーちゃん、お酒よわーい!!」
「慶は未成年だろ!飲むな飲むなっ!!」
慶の笹をからかう優しい視線に心が和んだ。
この二人が結ばれることを祈れた。
けど、
慶太がウトウト寝出した時、
笹は俺に言った。
「昴兄、なんで最近帰ってきてくれないの?」
「仕事、忙しくてさ。」
机に腕をくっつけて、その上に顔を乗っけて、少し赤い頬とトロンとした目で俺を見つめる笹に、少したじろいだ。
「昴兄がいないと寂しくてしんじゃうからね。」
「笹は酔うと甘えん坊さんになるの?」
「酔ってないー!!」
「ささ・・・」
いつものように、頭を撫でて笹をなだめる。
君が、猫ならいい。と。
「昴兄は、ずるいよ、」
「・・・・」
何も言えなかった。
まさにその通りで。
そしてこの時はじめて、笹が俺に好意を抱いてくれていたことに気付いた。
「昴兄。どっか行かないで。」
「・・・ごめんな、」
ただ、謝ることしかできなかった。