小さなあくび。
空き時間や、課題をこなす時、いつも行く図書館の隅っこの席。
小声でするやりとりは、いつも通りのことなのに、俺の胸を締め付ける。
高校の時から、笹は一人になりたい時、図書館の一番隅っこの机で突っ伏している。
大学に入ってからも、そう。
二人の暗黙の待ち合わせ場所になっている。
これは、昴兄だって知らない俺と笹の時間。
「今日は?さーちゃん、ゼミのあと暇なの?」
「うーん、そうだね、」
「じゃー、失恋パーティーしよっか。」
「なんじゃそら!!」
「声、大きいよ」
「うーむ。はーい。
久しぶりに飲もっか!」
俺だけを見て、笑いかけてくれる。
その目には、ほんとうに俺が映っているのかな?
笹のことを、いつまでたっても何歳になっても
“さぁちゃん"
と呼ぶのは、
“笹”
と呼ぶ昴兄と、
俺を重ねられないようにするための防御だって、知ってる?
泣きそうなのは、俺も一緒だってこと、気付いてるのかな?