小さなあくび。
「笹。」
目を見て、呟いて。
驚いた隙に、抱きしめてしまう。
「慶、太!?」
離して、やんない。
酔った勢いで、こんなことするなんて最低だってわかってる。
それでも、それでも。
どうしようもないくらい、好きなんだ。
ごめん、さぁちゃん。
だんだんと抵抗しようとする力が抜けて行くのがわかる。
「飲み過ぎたの?」
笹の声が、お姉ちゃんの声になる。
「そーかも。」
だから、だから。
それに甘えて、
酔った
っていう名目で、少しだけ、ほんの少しだけ笹の温もりを独り占めさせて?
「さぁちゃん。好き。」
「うん、」
「ごめんね。」
「…っ…うん、」
ゆっくりと腕を離すと、頬っぺたかま真っ赤な笹がいた。
なんで、そんな可愛い顔してんの?
少しは希望あるかもって、
一昨日、昨日、今朝。
粉々に砕け散ったほんのわずかな希望がまた芽を出してしまう。
少しして、会計を済ませて外に出ると春の風は少し肌寒かった。