小さなあくび。
「ちゃんと歩ける?」
お店で、慶太の腕が離れて行ってからも、なんとなく気まずくて一言もしゃべることができなかった。
こないだだって、抱きしめられたくせに。
なんで、こんな、動揺しちゃってるんだろう。
お酒は、何杯か飲んだのに冴え渡っている頭をフル回転しながら、自分の心の違和感に疑問符をなげかける。
お店を出て、やっと言葉を発することができたのに、慶太はなにも答えてくれない。
その代わり、半歩後ろを歩く慶太にギュッと手を強く握られ、いつのまにか立場逆転。
引っ張られる形になっている。
いつもは、私の気持ちを一番に考えてくれる慶太の強引な一面。
それを少し、心地いいと思っている自分が腹立たしかった。
慶太のこと、好きだったら
この、帰り道はどれだけ幸せに包まれた道になっただろう。