小さなあくび。






ブ、ブ、ブ、
と、規則正しいバイブレーションが
電気もつけないで鏡の前にしゃがみこんだ
あたしのポケットから聞こえる。







FROM 昂兄




やだよ、出たくない。
しゃべりたくない。




二年ぶりに会えたのに、
大人になったでしょ?
なんて、言ってやりたかったのに


自分の幼稚さを
痛感するだけなんて、

アホくさっ。




7個も年上で、
めちゃくちゃ仕事もできて、
背が高くて、
二重なのに少し鋭い目をしてて
鼻筋が綺麗で
唇が少し厚くて

なによりいつも、
可愛がってくれた。



笹、笹って
勉強教えてくれて、
水泳とか、球技とか
全部、昂兄がコーチしてくれて、
絵の描きかたも教えてくれた。




慶太よりも
少し多めにお菓子をくれて、
働き出した時には
慶太より
少し多めにお年玉をくれて、

美術大学に通っている時は
昂兄が帰省するたびにモデルをして

それが終わると
頭を撫でてくれて、



「なーんか、笹って、猫みたいだなっ」


って、
いつまでもいつまでも
優しくそばにいてくれた。












昂兄ぃ、





































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