総長様はご機嫌ナナメ 〜裂空VS獄炎〜
――結城は、特に喧嘩が強いという訳ではない。
もちろん喧嘩が弱いという訳ではないが、それでもレベルは良いところで中の下である。
そんな結城が幹部として[獄炎]に在籍しているのは、ひとえに戦略や策謀を練る事が得意なためだ。
相手の族の全体的な力量、総長や幹部の強さ、その規模、攻め込む時には相手の族の倉庫の立地条件や内部構造に至るまで――あらゆる情報を収集し、それらを考えた上で策を練る。
そんな彼の分析だ、今回もその作戦を採用すれば勝てるのだとは思う。
思う、のだが――…
「……申し訳ないけど、今回はその案は嫌だなぁ」
「え。なんで?」
「幹部――特に総長がいない時に[裂空]を潰しても、意味は無いんだ。個人的に」
「……マジかよ」
結城はそう応えながら、村瀬家でバッタリ会った[裂空]の総長を思い出した。