総長様はご機嫌ナナメ 〜裂空VS獄炎〜
『やーっ、怖いぃーっ!』
一瞬で混乱状態に陥った私は、半泣きで目の前にいた人物――恍太の背中に抱き付いた。
「うわっ、あ…飛鳥⁉一体どうし、」
『やぁだっ、離れちゃいやっ!』
驚いた恍太が私を引き剥がそうとするので、回した腕に力を込め、離れるもんかとしがみつく。
その光景を、呆然とした表情で見守るリョウと睦月。
室内に、微妙な空気が流れ始めたその時――…
「大丈夫だぞ、飛鳥」
「もう蜘蛛は外に逃がしたからな」
素早く我を取り戻した上生二人が私の机に近づき、そのまま蜘蛛を外へ放り出してしまった。
『……ありがと』
恍太の背中から顔を離した私は恐る恐る机の上を確認すると、安堵の溜息と共に礼を述べた。
そして、恍太から身体を離したその瞬間…
『―――――ッ!』
パニックになった間に自分の起こした行動を思い出して、血の気が引くのを感じた。
(待て、落ち着け…私は一体、何をしていた?)
焦りで空転する思考回路。
それでも、過去は消えてくれなくて。
「……おい、飛鳥」
「今のは一体……?」
『……あー、えっと』
驚きの表情でこちらを見つめる3人に、なにも答える事ができなかった。
―――――…
――――――…