総長様はご機嫌ナナメ 〜裂空VS獄炎〜
【苓Side】
『【悪鬼】ぃぃぃいいいい!!!!』
その怒号が響いた瞬間。
戦っていた僕と、相手――雷河は、身体の動きを止めると声の方へと顔を向けた。
視線の先で展開されていたのは、我らが総長・飛鳥が【悪鬼】に殴りかかるという光景。
二人は、何度か拳を合わせると、互いに後ずさって距離を取った。
そして、何か言葉を交わした後――それぞれ右手の拳を相手に突き出し、再び殴り合いを始める。
けれど……その動きが、二人共あまりにも滑らかで、綺麗過ぎて。
「………」「………」
僕も雷河も殴り合う事を忘れ、二人の戦いを見守り始めた。