夢見るゾンビ
クラスと名前を言って、門脇先生はやっと落ち着いてくれた。
「なんだ、森永か。・・・いやいや!なんだじゃない!」
門脇先生は、一人ぼけ突っ込みみたいな事を口走っている。
美人さんなんだけど、性格は「テンパッている菅野美穂」という表現がぴったりの、ちょっと先走ってしまうタイプの人だ。
「どどどどどーしたんですかその顔は!」
「あ、えーとですね、メイク失敗しました」
言うに事欠いた末の言い訳だった。
お母さんとの約束その2が、一瞬頭をよぎったけれど、やっぱり言いたくなかった。
誰かに話したら、今日のことが全部現実に起きたことだと認めることになってしまいそうで、嫌だった。
「へえ、今こういうのが流行ってるの」
わお、先生間に受けてるし。
「あれっ!学校内でメイクは、禁止だったはずでは?!」
「すみません、でもすぐ帰りますから」
「そうですか。いやいやいや、落としてから帰りなさーい」
先生が、来た道を引き返す。
仕方なく、私もついていった。