夢見るゾンビ
車内の小一時間、門脇先生が熱唱するよく分からない英語の歌につき合わされたのは大変だったけれど、なんだかんだで助かった。
確かに、あのままの顔で電車に乗ろうとしても、駅員に止められただろう。
車を降りてお礼を言うと、門脇先生が車の窓を開け、小さな紙を私の手に持たせた。
「森永~。何か話したくなったら、いつでも電話すること~」
メモには、携帯電話の番号が書かれていた。
私は驚いて、声も出ない。
門脇先生は、私の嘘に気づいていたのだ。
そして、何があったのかも、多分察していた。
走り去る先生の車が、坂道の下に消えて見えなくなるまで、私はそこに立ち尽くしていた。