夢見るゾンビ
「お前がやったんじゃないのか?」
部長が口を開いた。
「この間、俺に叩かれた腹いせに…」
「やってません!絶対にやってません!」
私は必死に否定する。
赤松先輩が、苛立たしげに天井を仰いだ。
いい加減、素直に認めなさいよ。そう言いたげな顔だ。
そりゃ、私はやってないのに疑われて、ビンタも食らったけど。他のみんなも同じでしょ?なんで私だけを、疑うの?
また、由奈が何か言ったの?
部長はため息をついた。
「まあ、いい。証拠も、目撃証言もないから、否定されればどうしようもない」
その言葉の端々から、部長も私がやったんじゃないかと思ってることが分かった。
及川先生は、何も言わずに手を組んで、成り行きを見守っている。完全な傍観者だ。
「俺は正直、この際誰がやったのかはどうでもいい」
部長が続けた。
「赤松から聞いたけど、飯野たちとうまく行ってないみたいだな。そしてこの、やかん騒ぎ。無関係じゃないだろ。俺ら3年にとって、今は甲子園に行く最後のチャンスをかけた、すごい大事な時期なんだ。何があったか知らないが、マネージャーが仲間割れして足引っ張るような真似は、許せない」