夢見るゾンビ
話は、いつまでも平行線を辿るばかりだった。
3人の言ってることが、さっぱり分からない。
ただ一つ分かったのは、この人たちは正しいこととか私の気持ちには全く興味はなくて、甲子園に行くことしか考えてないってこと。
勝負の世界では、そういう考え方が普通なのかもしれない。
おかしいのは、私の方なのかもしれない。
私よりも大きな3人を相手にしているうちに、私はどんどん自信をなくしていく。
多分、おかしいのは私のほうなんだ。
結局、最終的に
「分かりました。やめます」
本当は全然分からなかったけれど、そう言った。
それと一緒に、涙が一粒、こぼれた。
ロッカーから自分の荷物を出すと、誰にも見られないように、そっとグラウンドを後にした。
夕焼けでオレンジ色に染まったグラウンドでは、部員がみんなでランニングをしていた。
地面を蹴る音と掛け声。
誰かが笑う声。
風に乗って届くその音を背中に聞きながら、私は一人、野球部を去った。