夢見るゾンビ
富士見犬の像の前まで来た。
富士見犬というのは、ご主人様に富士山を見せるために何十キロもの道のりを犬ぞりをひいたと伝えられている、昔の忠犬だ。
学校の最寄り駅である富士見中央駅前の広場にその像が建てられていて、待ち合わせの定番の場所になっている。
脇のベンチに、腰を下ろした。
駅前はファッションビルとか映画館なんかが集まっていて、週末はオシャレな格好の人が多い。
友達とおしゃべりしながら通っていく、私と同じくらいの年の子。
彼氏と手をつないで、幸せそうなお姉さん。
みんな楽しそうだ。
向こう側のガラス張りのビルに、ベンチに座る私の姿が映っていた。
ものすごくちっちゃい。
肩が下がっていて、いかにも不幸せそうだった。
脇に袋の荷物を二つも抱えて、なんだかホームレスみたいにも見える。
だめだ、こんなじゃ!
最近、前向きスイッチを押す気にもなれなかったのだけれど、無理やり押した。