夢見るゾンビ
柔道部の大柄君が、取り巻き2名を連れて近づいてきた。
大柄君は、名前のとおり大柄だ。
「森永おめぇ、野球部が甲子園行けなくなったらどうするつもりだよ!」
「ふざけた真似しやがって、青木に謝れよ!」
大柄君は、向こうに座っている颯太くんを指差した。
えぇ?!私は、お目目がまん丸に。
謝られるなら分かるけど、謝るのは違うでしょ!
颯太くんは、決まり悪そうに
「いいって!」
と言ったけど、それ私のセリフなんですけど・・・。
とりあえず、私は
「私、何もしてません」
そう否定してから、
「今だって野球部のみんなのこと、大好きだよ?そんなこと、するわけないじゃん」
そう言った。
多分、颯太くんに事の真相を直接話すことはかなわない、だから。
誰にも気づかれないように、私はその言葉に、そっと颯太君への思いを乗せた。
ほんとうに、野球部のみんなが、大好きだ。
楽しかった部活動のことが頭をよぎって、思わず泣きそうになった。