夢見るゾンビ

とはいえ、黄色一色のクラスの中での白はかなり浮いている。

「由奈、ユニフォームデコってきたの?かわい~い!」

いつもと違う格好をしていることでテンション高めの教室は、いつもより居心地がさらに悪い。

私は、購買でメローイエローかバナナオレでも買ってきて黄色に染めてしまおうかと半分真剣に考えていた。

そのときだった。

教室に入ってきた竹内さんの姿に、みんなが驚きの余り動きを止めた。

竹内さんが着ていたのは、黒い無地のTシャツだった。

みんなの驚きをよそに、竹内さんはいつもと同じ顔で自分の席に着いた。

黄色い集団の中の黒一点は、白より何倍も目立つ。

かわいいミツバチの群れに殴り込みをかけてきたクマンバチみたいだ。

耳にイヤフォンをして寝た振りを決め込み、完全に「話しかけんなよ」オーラを出している。

「ちょっと、ちょっと!竹内さん」

由奈が竹内さんの肩を叩いて、ようやく竹内さんが目を開けた。

「竹内さん、昨日ユニフォーム渡したでしょ?なんで着てこなかったの?」


「ダサいから」

教室の空気が、固まった。

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