夢見るゾンビ
「・・・ね。なんで竹内さんは、私たちのこと助けてくれたんだろうね?」
ぶーちゃんが、廊下を歩きながら首をかしげる。
「うーん」
私も、首をかしげた。
夏休みのあの一夜のことが、頭をかすめる。
終業式の日も、あの夜ベッドの中でも、竹内さんは確かに、私に何かを伝えようとしていた。
それが何だったかは、私途中で寝ちゃってよく分からなかったけど。
夏休みのあの出来事は、竹内さんの秘密を守るためにはぶーちゃんといえども話すわけには行かない。
「なんでだろうね」
そう言って、ごまかした。
あの時、私は、少し変わった。そしてそれを見た竹内さんも、少し変わった。
竹内さんが言いたかったことが、ほんの少しだけど分かったような気がした。
私たちは今、部室棟へ向かう渡り廊下を歩いている。
竹内さんが由奈の化けの皮を剥いでくれたお陰で、教室内の嫌がらせは収まった。
だけど、教室が居づらい場所であることに変わりはない。
門脇先生が、階段下の倉庫以外に居場所のない私たちを新しい部活に誘ってくれたのだ。
「ねぇねぇ君たち。英語研究部に来ない~?部員、1名しかいなくて廃部寸前。アハハ~」
門脇先生は、人気絶不調の英語部の顧問だった。
英語が特別好きなわけでもなかったけれど、もっと広くてのびのびできる居場所がほしくて、私とぶーちゃんは英語部に入ることになった。