夢見るゾンビ
それは、冬服の色の濃さがまだ目に新しい、10月の朝のことだった。
駅の自動改札口に、王子さまが挟まっていた。
王子さま?
えぇ、王子さまとしか言いようがないですね。
ブロンドの髪の毛。
同じ人間とは思えない、見上げるような背の高さ。
肩に房べりがついた、青くてテロテロ光ってるジャケット。
白のピチピチパンツ。
茶色の皮ブーツ。
そして、極めつけは、その頭の上に載った、冠。
まさに、王子さまだ。
王子は改札口の非情な番人に行く手を阻まれ、大変お困りのご様子だ。
余りにも高貴すぎるのか周りは誰も声をかけず、みんな見ない振りをして他の改札口から逃げていく。
かわいそうになってきて、私が教えてあげた。
「あの、それはスイカじゃなくてワオンカードです」