夢見るゾンビ
・・・失敗した。
親切になんか、するんじゃなかった。
バスの中で、私は後悔しまくっていた。
「ナマ~エ、オシエテクダサーイ」
王子が私の隣で、しきりに話しかけてくる。
「ナンネンセイ~デスカ」
「カワイ~セフークデスネ」
「カレシィ、イルンデスカ?」
もう・・・
満員に近いバスの中で、私は注目の的だ。
王子はそんなことを全く気に留める様子もなく、まるで馬に乗って野原を散歩しているように楽しげだ。
「アレ!アレミテクダサ~イ」
王子が指差した先には、何の変哲もない住宅。
「ドラエモン’S ハウス!Wonderful!」
日本ではよく見る二階建ての一戸建て住宅が、王子にとってはアニメの世界の風景らしい。
王子ははしゃいで、写真を撮った。