夢見るゾンビ

昼休みになっても、王子は注目の的だ。

「なんで王子さまの格好してるんだ?」

「前の学校の制服なんじゃね?」

色々と憶測が飛び交うが、王子が日本語があまり出来そうもないのでみんな遠巻きに見ているだけだ。

その注目の中で、王子が注目しているのは、私。

あまりにもしつこく名前を聞いてくるので、

「・・・ばんび」

名前を仕方なく教えた。

「oh、バンビィ?」

王子は目を丸くして、それからクス、と笑った。

え、なんで笑ったの今?

もしかして、フィンランドでは「バンビ」って変な意味になるとか?

イタリア語では「子ども」という意味だったことを思い出して、私は慌てた。

「え、なんで笑って・・・」

「No,ノー。カワイイ、ナマエ。ダネ?」

そう言って、王子はニコッと笑った。

「はあ、そりゃどうも」

詩織が、笑う。

「ばんび、今あんた、ダーリンって呼ばれてたよ」

えぇぇぇえええ?!

ダネ?って言ったんじゃないの?

ダーリンって!!

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