夢見るゾンビ
勾配が急になってきた。
ゴツゴツした岩が地肌からのぞく山道を、足元を確認しながらゆっくり進む。
岩の割れ目が、階段がわりだ。
わー、なんだこりゃ!
進んでいくと、階段とは言えないくらいの大きな段差に出くわした。
私の腰の高さくらいはある。
小学校のときだってどうにかして登ったんだし、これくらいの段差が登れなくてどうする!
そう意気込んで段差に飛びついてみたのだけれど。
「イヤー!」
お、落ちるよ!
バタバタしてると、上から手が伸びてきた。
ミーシャだった。
「ばんび、つかまって」
私が手を伸ばすと、ミーシャが私の手をギュっと捕まえてくれた。
そして、上まで引っ張り上げてくれた。
「大丈夫?」
「うん、ありがとう」
私の顔をのぞきこんだミーシャの顔が、思ったより近いところにあって、ちょっとドキドキした。
不思議だ。
ミーシャと一緒に過ごす時間が増えれば増えるほど、ミーシャがパーヤネンという名前だということが気にならなくなってくる。
「パーヤネン」という言葉で連想するものが、「関西系のお笑い芸人」から次第に別なものに変わってきているのを感じる。
別なもの、それは。
大きくて、温かい手。
無邪気な笑顔。
すっと伸びた背筋。
時々見せる、頼もしさ。
平らな心。
優しい気遣い。
私に対する、真っ直ぐな思い。