夢見るゾンビ
ガードレールにたてかけていた自転車に乗りなおすと、力強く漕ぎ出した。
夢と希望にあふれた体からは、無尽蔵にエネルギーが湧いてくるらしい。
自転車はすぐにトップスピードに乗り、さっきのサラリーマンをあっという間に追い越した。
スカートが膨らんで、めくり上がりそうになるのを「きゃぁ」と言って抑えたが、そんな事すらまるで楽しいことのように、少女は屈託のない笑みを浮かべた。
自転車はそのままのスピードで、まだ往来のない団地の下り坂を、緩やかな弧を描いて下っていく。
加速に身を任せながら、風と光の中で少女が叫んだ。
「森永ばんび、15歳。
今日から、富士見学園高校の1年生。
ばんび、行きます!」