夢見るゾンビ

「ねぇ、ばんびちゃん」

飯野由奈ちゃんから声をかけられたのは、それから数日後。

体験入部の初日の、放課後だった。

体験入部というのは、正式に入部願いを出す前にあっちこっちの部活動をお試しで体験できるという、素晴らしいシステムのことだ。

その期間をせっかく一週間も設けてくださった先生方には申し訳ないけれど、私は野球部のマネージャーしか考えていないので、今日から部活動が始まるという気持ちでいる。

その決意の証として、今日はポニーテールにしてきたんだから!

「ばんびちゃんも、野球部のマネージャー希望なんでしょ?」

ゆなちゃんにそう聞かれて、私はうなずいた。

え?「ばんびちゃんも」ってことは・・・

「私もなの。ね、一緒に行こ!」

ゆなちゃんは、両手を胸で組んで上目遣いで私を見た。

ズッキューン!!

ゆなちゃんのお願い攻撃は、一度で私の胸に命中!

そんなかわいい顔でお願いされたら、嫌でも嫌なんて言えないよ!

嫌なわけ、ないし!

「マジすかぴょんぴょん!」

思わず、そう言ってしまった。

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