夢見るゾンビ
右、私の知らない人。
左、私の知らない人。
前、やっぱり知らない人。
後ろ、うん、全然知らない人。
自転車と電車とバスを乗り継いで、片道2時間かかるこの富士見学園高校。
私の通っていた中学から、この高校に入学するのは、私一人だけなのだ。
唯一知ってるものといえば、学園のあるこの丘からちょこんと見える富士山くらいなものだ。
寂しい?全然。むしろ嬉しい。誰も私を知らないところに行きたくて、この学校を選んだようなものだから。
友達ならこれからたくさん作ればいいでしょ?
1学年は普通科だけでも5クラスもある。それだけで200人でしょ。他の科とか先輩後輩合わせれば、千人くらい行けちゃうかも!
友達、最低百人は作るんだっ!
そう考えると、周りにいる知らない人が全部、友達に見えてきて。
「みんなー!愛してるよ!」
と叫びたかったけど我慢して、私はその代わりに早足で昇降口に向かった。