夢見るゾンビ

おわ、びっくりしたぁ~。

私は驚いて、反射的に体を固めた。

何人か、ガヤガヤ喋りながらトイレに入ってきたのだ。

こういう場合、わざと物音を立ててこちらの存在を知らせるという方法もあるけれど、なんだか存在を知られてはいけないような、そんな空気を感じた。

「あのチビ、なに調子乗ってんの」

最初の声の主は怒りが覚めやらない様子でまくしたてている。

「こっちがせっかく優しくしてやってんのに」

個室に入る気配はなく、友達と鏡で顔のチェックでもしに来たらしい。

あのチビって誰のことだろう。

「ちょっと教えてやらないと、わかんないんじゃない?あいつ、天然無自覚だから」

あいつって誰のことだろう。

「でもあいつ、マジでそんなこと言ったの?ウケルんですけど」

「ほんと、ほんと!」

笑い出した。声の違いで、3人はいることが分かった。


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