夢見るゾンビ

「お昼時間に一緒に部室に来たんですけど、そのとき森永さんが、それを持って歩いてるのを見ました」

・・・え?

私の中で、何かが止まった。

確かに、お昼に由奈たちと一緒にタオルたたみに来たのは本当だ。だけど、外の用具入れに入っているはずのヤカンを用もないのにわざわざ取りに行ったりするわけがない。

幾ら私が夢見がちだったとしても、これだけは確かだ。私は昼休みにヤカンを持っていない。指一本触れていない。見てもいない。

「違います!私は、ただタオルをたたみに来ただけで・・・」

「私も見ました。ヤカンを外の用具入れにしまいに行ったんだろうと思ったんですけど」

恵梨が、私の発言をかき消した。

一緒にいなかった川崎さんまで、加勢しはじめた。

「用具入れに行ったにしては、随分早く帰ってきたなと思ったんだよね。道理で」

圧倒的に、不利な状況だった。

それでも私は、なぜか「3人は嘘をついている」とは言えなかった。

それを認めたくなかったのかもしれない。

私はただ、黙ってうつむいた。





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