夢見るゾンビ
「ちょっと!こっちに来て、みんなに謝りなさい!」
私は赤松先輩に引きずられるように、グラウンドに連れて行かれた。
グラウンドには野球部の部員がベンチ脇に集まっている。給水をしようと集まってきたところで、ヤカンの異変に気づいたらしい。
「みんな、もう少しで飲むところだったんだからね!」
数十人の部員が、一斉に私を見る。みんな、何も言わない。
でもその視線には明らかに、冷ややかな怒りが込められていた。
「3番、バッター ばんびくん」と呼んでいじってくれた時の、朗らかな空気はどこにもなかった。
颯太くんもこの中にいるはずだけれど、私は怖くて顔を上げられない。
どんな顔をして私を見ているのか、想像するだけで恐ろしかった。
この場を早く、終わらせてしまいたい。
それなら、さっさと謝ってしまうのが一番かもしれない。
そんな考えが頭をよぎり、私は足を一歩前に踏み出そうとした。
そのときだった。