君にあえて ‐‐一般人の私と芸能人な君‐‐

「じゃあ、店員呼ぶよ?」

瑠夏がそう言って「すみません」と、近くにいた店員に声をかける。


瑠夏が私の分のやつまで言ってくれた。

瑠夏はスープパスタで、ドリンクはアイスココア、デザートはチョコケーキらしい。


あ、これは、『パスタ・デザートセット』だよ♪

って、誰に言ってるんだか…(笑)


「菜桜、あれなんだろ?」

店の奥の方で人だかりができている。

じっと見るが、
大勢の人が邪魔をして見られない。


「わかんない…でも、気になるよね!」
「うん。聞いてみる?」

と、瑠夏が店員を指差す。

さっき頼んだパスタを持ってきた様だった。

「お待たせしました。たらこパスタになりますー…」

店員が頼んだパスタを目の前に置く。

瑠夏のスープパスタを置くと一礼をして、戻ろうとする。

「あ、あの!」
「はい。」

呼び止められた店員は振り返り、注文のメモをとろうとする。

「いえ、そうではなくて…」

店員は「はい?」とでも言いそうな顔でこっちをみた。

「あそこ。何やってるんですか?」

瑠夏がフォローにはいる。

「ぁあ、あそこですか。撮影ですよ」

店員が笑顔で言う。

「「!?」」

瑠夏と顔を見合わせる。

『奏かも!』

そんな考えがよぎった。


「何のですか?」

すぐに店員の方に向き直り、聞く。

店員は「いっていいのかなぁ?」と、頭をかく。

「あ、ダメならいいですよ?」
「あ、いえっ!」

店員が慌てて否定する。

「グルメ番組の撮影みたいで、flowerの藍沢奏って人が来てるみたいです。」

そう言うと「そろそろ、戻りますね。」と、言って一礼して戻ろうとする。

「ありがとう!」

店員は振り返り、笑顔でまた一礼して去っていった。

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