お隣注意報


私は今、長原さんの腕の中にいる。

…え?

なんで私抱き締められてんの?

泣いてるところを見られたくなくて。

勢いまかせに好きと言ってしまった自分が恥ずかしくなって。

部屋を出ていこうと後ろを向いたときに。

後ろから覆うように。

「工藤さん、今何て言った?」

私、何て言った?

──────『長原さんなんて好きになるんじゃなかった。』

……好き?

なんでそんなこと聞くの。

ゴメンって、言ったじゃん。

涙、とまれ。

「工藤さん。」

やだ、もういやだ。

そうやってからかわないで。

ここで喋ったらバカにされるに、笑われるに決まってる。

「…放して下さい」

「質問に答えてよ。オレのこと好きなの?」

「はぁ?!」

聞こえてたくせに質問したの?!

最悪だ。

やっぱり答えなくて良かった。

「ははっ、オレのこと好きなんだ?」

「好きじゃない!!」

「さっき好きって言ってなかった?」

「言ってない!!」

「あれ?おかしいな、長原さんなんて好きになるんじゃなかったーって聞こえたんだけどなー。」

「っっっっ!!!幻聴です!!」

「図星でしょ?」

さっきまでの暗い長原さんはどこにいったのと聞きたくなるようなほど、きっとにこやかな顔をしているに違いない。

長原さん、なんでこんなに楽しそうなの?



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