お隣注意報
やっぱりこうなる
はれて付き合うことになりました。
工藤侑紀と申し上げます。
「長原さーん」
「あ、おはよう侑紀」
「おはようございます」
あの日から数週間。
長原さんは私を「侑紀」と名前で呼ぶようになった。
今日も大学ということで一緒に登校。なんて遅い青春ライフを送っている二十歳。
『ちょ、何して』
長原さんの顔が近付いてきて、唇の感触を知ったときにはいつもの笑顔で。
「おはようのチュー。恋人の日課でしょ?」
恋人同士って、なんていい響き…!
でも外でするあなたに恥という言葉はないんですか。
そんなことを思っていれば、しだいに頬の筋肉が緩んできていたらしく。
「侑紀、今なに考えてんの?」
『え、ちょっと…はへへ』
はへへってどんな笑い方だよ私。
「どーせエロいことでも考えてたんでしょ」
『何言ってんですか。長原さんじゃあるまいしそんな馬鹿なこと考え…』
「オレじゃあるまいし?なに?オレがいつもそんなこと考えてるとでも?この恋愛に奥手な俺が?」
『奥手な人はおはようのチューなんてしませんよ』
「口答えなんてするんだ。オレにそんな口聞いていいと思ってる?」
『思って…ないです』
オーラが黒い。だめだ、逆らえない。後でなにされるか分かんないから怖い。
「あー着いちゃった。じゃあ後で侑紀のとこに遊びに行くね」
『遊びに…!? だめだめ!だめです!』
ただでさえ目立つ顔してるのに、てかモテてるのに。
あんなファンクラブのようなものまで出来てる長原さんが私と付き合ってるなんて知れ渡ったら私はイケメンの彼氏ができて鼻が高いけど、前に絡まれたばっかりだし…元カノ発言したパーマンも黙ってないだろうし…。
「なんで?」
『なんでもです!じゃあ!』
そそくさと長原さんに別れを告げて小走りで離れる。
視界にパーマンらしき人物が見えてしまったけど見えなかったことにしよう。