恋する家庭教師
「それじゃ」と言って、お母さんは葵君の部屋から出て行った。

葵君のお母さんも葵君もなんでもない顔をしているけれど…。



慣れてきたとは言え、彼に何かを言う事は少し勇気がいる。

「ぁ…あの、葵君ッ? よくないよ」
「…はぁ?」


何言っているかわかりません。って言う顔しないでよ…。

ヒザに置いた両手に汗をかいてい…震えてる…。

怖い。
特に、こんな風に誰かに何かを言うなんて…。


「あのね。…………お母さんに、あんな……言い方、よくないよ…!」

…言い切った後の脱力感に軽い目眩を覚えちゃう。

目がカスむ。
軽く、呼吸がしづらい。


「何が?」


うぅ…。あんなに一生懸命言ったのに、伝わってないなんて…。
ガックリと、肩を落として落ち込んじゃう。

しかも、ものすっごく鬱陶しそうな顔。

美少年すぎるから、その顔も怖い…。
両手だけじゃなくて、体中が震える。
どうしよう…やっぱり、怖いよ…。


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