恋する家庭教師
ご立腹の母さんの背中を眺めて、テレビの方を見ると「あははは!」と爆笑している茜を睨む。
その視線に気付いた茜は、俺の方を見るとニヤリと笑いやがった。
「なーに睨んでるのよ。葵君…、私、イヤよ~? おバカな弟なんて。勉強してて損ナシ! ガ~ンバッ!」
…他人事のように言いやがって…こんにゃろうめ…。
「あ、おかーさーん!! 香川先生を葵に上げちゃダメだからね! 先生、私のだから!」
俺だっていらんわ!
香川先生とは、茜の中学3年の時に家庭教師していたやつだ。
俺は、その時は勉強より友達と遊ぶ事が好きで、まったく知らなかったけど…まさか、カテキョとくっつくとは…両親すらも思ってもみなかったようだ。