恋する家庭教師
袋から出てきたのは、数学の参考書。
…ムカつくな…この表紙の『超わかりやすい数学参考書』と、書かれていた。
なんだか、バカにされたような気がするのは俺の自意識過剰だとはわかっている。
わかっているけど、気に入らない。
気になるという反面、ビクビクと怯えるあの顔を思い出すとムカつく感情があふれ出る。
…こんな気持ちは初めてだ…。
「…ん?」
紙袋にはまだ何か入っていた。
何だ?
取り出したのは、透明な袋に入ったクッキーだった。
けど、俺が紙袋を落としたからか…袋の底のクッキーは砕けている。…そして、もう一つ…。出てきたのは一枚のメッセージカード。
『家庭教師は初めてですが、互いに手探りしながら頑張りましょう!神田結花』
かわいいけれどシッカリとした字を俺は、ボゥと何度も眺める。