恋する家庭教師
…ヒドイ。
そんなことしなくてもいいじゃない…。


「勉強してる時に視界の端に、こんなズルズルの髪が入ってきたら集中出来ない」


「…ご、ごめんね?」


葵君が言ってる事はもっともだ。


私は、カバンの中に入れている化粧ポーチに常備しているゴムを取り出して、一つに纏める。

「じゃ、答え合わせするね?」

そういって私は、彼が書いた答えに○や×を書いていく。



「…え? ここって、なんで×なんだよ?」

「ぁ、ここ? ここは…答えは合ってるんだけど、求めている式が違うの。本来ならば……この式を書いて答えを導き出さなきゃいけないの」



「……意味わかんない」


「簡単に言うと…、今回はこの式で答えはあったんだけど、他のときにはこの式を使っても違う答えしか出ないから…」


愛用の赤ペンで、開いた空白部分に正しい式を書いていく私は、その時、彼がどんな顔をしていたかなんて気付く事がなかった。
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