Line
 あれから二十年、私は親元を離れて都会で一人暮らしをしている。
 そう、いつも一人だ。
 街には恋人達で溢れているのに私は一人だ。 先週私はそれを失ったのだ。
 もう疲れてしまった。
 私の前には不眠症だと言って心療内科から処方された、飲まずにいた睡眠薬が山となって積み重ねていた。
 これで終わりにするんだ。
 私の中の私がそう言った。
 その時、私の携帯電話が鳴った。
 一回、二回、三回、四回目の呼び出し音で私は回線をつないだ。
 電話の向こう側からは子供の様な息づかいが聞こえてくる。
 私は自分の名字を名乗った。
 すると向こうからは幼い声でフルネームが返ってきた。
 それは私の名前だった。

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