♀めい☆こん♂

『お客様氏名
(俗名)
　故　春日井 灯
（カスガイアカリ）　　　　　　　　様
(法名)
釈 尼 灯 春 信女
(ｼｬｸﾆﾄｳｼｭﾝｼﾝﾆｮ)
　(国籍)　　　日本
　生年月日
　1989年4月11日
午前03時03分　生誕
　没年月日
2012年10月15日
午後3時20分 死去

(死亡理由)事故死
海外出張で飛行機に搭乗した際、乱気流に巻き込まれ海に不時着する寸前壁の破損により飛行機から投げ出され海に落ち水面に激しく叩きつけられ全身打撲による意識不明でその後駆けつけた救助隊に発見され救助されたが現地搬送先の病院で死亡が確定された。

…依頼者…
（喪主）春日井 甲太（ｶｽｶﾞｲ ｺｳﾀ）
　　　　春日井志甫（ｶｽｶﾞｲ　ｼﾎ）
(依頼願書)
１人娘だったせいか人一倍結婚願望が昔から強かった娘の夢を叶えてあげたく‥暝婚の儀を執り行い送り出してあげたく暝婚を嘆願致します。』

　バインダーに綴られた冊子を捲った手がとまり冊子に記入された文面に釘付けにならずにはいられない。

　上質な和紙に達筆な筆さばきで私の氏名（俗名）から順々に書き記されている内容に私は‥釘付けになった。

　そんな‥まさか‥。
　でも‥確かに私‥。
飛行機に乗って出張先に向かう予定だったのは事実だ‥。
そう確か憧れの川渕さんが出張にいく筈だった‥。
だけど‥川渕さんはその日別のクライアントとの打ち合わせが入ってるとかなんとか言ってて困ってるのを見て‥私も一緒に携わっていたプロジェクトだったし憧れの川渕さんの力になれるなら‥川渕さんの代わりに私が書類を届けプレゼンまで行う役を引き受けて乗った飛行機が‥。

　止まっている筈の心臓なのに‥なぜかぎゅっと誰かに掴まれたように痛みを感じた。
全身が震いたち持っているバインダーすらも重く感じた。

「春日井灯さん？大丈夫ですか？」

文面に生気を奪われ放心状態の私を気遣うようにいつの間にか私の背中をゆっくりと擦って気遣ってくれた釈さんの優しさに私は思わず彼女に抱きつき嗚咽まじりに声をあげた。

「私‥あの飛行機事故で‥死んじゃったの？
ホントにあの事故で‥。」

釈さんは、そんな私の背中をゆっくりと優しく撫でとても穏やかな口調で答えた。

「‥残念ながら‥。そのようですね‥。
灯様のご無念もさることながら‥ご両親のご心痛もそれ以上に悼みいる思いでしたよ。」