どうぶつ童話集。
旅の途中、ねこは出会ったみんなに「ボクの名前を知らない?」と聞きました。
でもみんな「ねこじゃないの?」と言います。
その度に、ねこは「そうじゃないのに…」としっぽをしゅんとさせます。
自分の名前を聞き回るねこのうわさを聞いて
いろんな動物がねこに会いに来ました。
けれどもみんな「ねこさん」と呼ぶのです。
ねこが悲しくなって塀の上で泣いていると
大きなカラスが降りてきました。
「ねこさん、君はどうして自分の名前が知りたいんだい?」
「だって、ねこはみんなねこだけど、ボクはボクだから…リクみたいにボクだけの名前がほしかったんだ」
ねこが泣きながらそう言うと
カラスはかぁかぁ笑いました。
「名前はたしかに大事だけど、それは誰かに呼んでもらえるから『大事』なんだよ。名前そのものが大事なワケじゃない」
カラスはそう言って去って行きました。