どうぶつ童話集。
雨が止んでも
こいぬは黄色い傘の中から出ようとしません。
生まれてはじめてもらった大切な宝物だから、
はなれるのがイヤだったのです。
来る日も来る日もこいぬは黄色い傘の下で過ごしました。
お腹が空いても、
風が強くても、
子供たちにいじめられても、
こいぬはずっと黄色い傘からはなれませんでした。
だって、
とっても嬉しかったんだもん。
傘の中にいると、あのぬくぬくした温かさを感じるんだもん。
もう1度会いたくて、
ずっとこの黄色い傘の中にいたの。
もう1度『わんちゃん』て呼んでもらいたくて、
ずっと待ってたの…。
こいぬはぬくぬくした温かさに包まれて静かに目を閉じます。
『わんちゃんっ』
遠くで女の子の可愛い声が聞こえた気がしました。
おしまい。