「戯れ」に私は願う
その響きが近くなり
鳴き声と共に
眼前に現れた一羽の鳶
空の上の空を目指すかのように羽ばたく
大きく大きく
何度も何度も
羽を上下させ昇ってゆく
ただひたすらに昇ってゆく
鳶の羽ばたきが止まる一瞬の後
鳶は羽ばたくことを忘れたかのように
鳶は羽ばたくことを諦めたかのように
羽を閉じ滑降してゆく
その速度は速く
あっという間に地に近づく
あれだけの力を出し
昇った空間を
こんなにもあっけなく
滑り落ちてゆく
ああ……
落ちてゆくのは早い
こんなにも早い
鳶の「戯れ」に
私の心はざわめく
滑空するあの翼が欲しい
ああ……
力強く……
どこまでも……
どこにでも……
悠然と羽ばたける
翼と力が欲しい
「どうか翼と力をください」
大きく息を吸い込んで
私は天を仰ぐ
渇望し天を仰ぐ