レス彼 〜私の彼氏はセックスレス〜
我が家では風呂は一緒に入る、という家訓がある。お互いの髪や身体を洗いあっこするのだ。

美容院で髪を洗ってもらうと恐ろしく気持ちよい経験をしたことはないだろうか?どうせなら一緒にお風呂に入って、お互いを洗いあっこすれば、お互いが気持ち良い思いができるじゃないか、と、まるで世紀の大発見でもしたかのようなキラキラした目で敦彦に提案されてから、ずっと続いている。

しかし、そんな簡単に美容室並みのサービスを提供できるわけもなく、やれ耳にお湯が入っただの、目にシャンプーが入っただの、賃貸マンションの狭いユニットバスでぎゃーぎゃーと騒ぎながら洗いあった。

その甲斐あって、最近ようやくいきつけの美容室より気持ち良いんじゃないかと思える腕をお互い身につけた。

篤彦は、やれやれ手間がかかる子供だなぁという顔付きで、それがまたかわいいと思っていそうなため息まじりの笑顔で私の上着を脱がせ始める。


ふと、私の中に小さな期待が生まれる。



すべてを剥ぎ取られた私は、服を着たままの篤彦にぎゅうとしがみついた。



なんとなく、反射的にしがみついた。



「どうしたの?」


「ん〜…」


甘えた声で鳴いてみる。


これでわからないだろうか。私からの合図が。

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