鬼の花嫁 ‐巡る季節‐
「良助くん、お姉さんいたの?」
「ん、ああ。5つ上のな」
懐かしい表情をしながら
良助くんは子供の頃の話を始める。
「俺が小さい時に親が死んじまってさ…
姉貴が親代わりだったんだ。
それで、冬になるとこうやって
雪うさぎを作ってくれた」
穏やかな瞳を雪うさぎに向け、
小さく微笑む。
幼い頃に両親が死んでしまった…
という言葉は胸がズキリと痛んだけれど
良助くんの話すお姉さんはとても優しくて…
「いいなぁ…お姉さん」
ポツリと呟いた言葉に
良助くんがあたしの方へ顔を向ける。
「ん、桜いねぇのか?」
「うん、一人っ子。
…だから、羨ましかったなぁ…」
お父さんはあたしが幼い頃に死んでしまって…
母子家庭のお母さんは
仕事で帰るのが遅くなることがあって
一人だと寂しいと思うこともよくあった。