白銀色の花卉‐ギンイロノカキ‐
第一章
キュッ……キュッ……。
何……?
ずっと真っ暗だった視界が、ふわっと白くなった。
「ああ、私は目が覚めたんだ」と思ったけど、すぐに違うと気づいた。
じっと目の前の、ふわふわした雪が落ちていくのを眺めたあと。
果てしない雪景色の中に響く、この音を。
誰かに肩を担がれて歩かされている、この感覚を。
私は、知っているような気がしたから。
ガタンッ!!
「……んっ」
あ、ここはバスの中か。
無意識に目元へと持っていった指に水滴がついた瞬間、自分が夢で泣いていた事に気がついた。
何で泣いてたんだろう?
何も覚えていない……。
ぼーっと座っていると数名の乗客達が真ん中の通路を歩いていき、バスを降りていくのが見えた。