セイクリッド
大介が引き下がる気がないとわかったので、私は海原さんの言葉を思い出すように語った。


ぽつりぽつりと呟く私の言葉を、大介は黙って聞いていた。




「…それで、私……少しだけ思い出したことがあるの。海原さんの話をきいてから」

「思い出したこと?」

「うん。小さい頃の曖昧な記憶……私、ホームを抜け出した頃のこと、覚えてる」

「でも、それって3歳とかだろ?」

「うん。だけど覚えてる……」




そう、私は覚えていた。

っていうより、忘れていたけど……思い出した。


――…いつも見る、夢を。




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