フクロウの声
「君にはこれから、男として新撰組に入ってもらうそうだよ。」
 
マオリは男物の着物を手にとった。
手に触れる生地から上物だとわかる。

「そうだ、君はどこの生まれなの?」
 
マオリが一言も返さないのに沖田は続けた。
黙っていると、沖田は困ったように笑った。

「なかの・・・村。」
マオリは自分の生まれ育った村の名前すらよくは知らなかった。

村の近くには、山側に近い集落とふもとを下った集落があったため、
その真ん中に位置するマオリの村を便宜上、
中または半と呼んでいた。

マオリにとって狭い村が世界のすべてであったから、
名前など必要なかったのだ。

「それでは、君の名前は仲村としよう。
 仲村・・・織之助と名乗ったらいい。」
 
マオリの名から二文字をとって、沖田は男名をつけた。

「さあ、私はあちらを向いているから、着替えて。」
 
沖田は背を向けて月を見上げた。

血のついた着物を脱ぎ、
言われるがままにマオリは着物を着替えた。

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